こんにちは! 僕の名前は風祭将です。
毎日学校に通う、どこにでもいるような中学2年生の僕。
勉強は……ちょっと苦手だけど、いつも楽しく過ごしてます。
友達もいっぱいいるしね。
よし、今日も部活がんばろうっと。
★☆★
いけないいけない、遅くなっちゃった!
1人で最後までシュートの練習してたら、もう夕方だよ。
今日は功兄とご飯食べに行く約束してたんだよね、急いで帰らなきゃ!
その日、僕はそんなわけで慌てて学校を飛び出したんだ。
せっかく学校が午前中で終わる日だったっていうのに、見上げるとすっかり夕焼け空。
一番星がぽつんと光ってる。
功兄との約束の時間はもうすぐだったけど、あんまりにもそれが綺麗で、僕は思わず見とれてしまう…。
…………あれ?
なんだろう、何かが降りてくる?
ぴかっと光って…UFO?
それは僕の目の前まで降りてくる。
一抱えもある光の球だ。
僕はびっくりした。
それがいきなり話しかけてきたんだから。
……え?
なんだって?
僕が呼ばれてるっていうの?
誰に?
え、ついてくればわかるって……えぇえ、ちょっと待ってよ〜!!
ついたところは、なんだか豪華な…豪邸みたいな家だった。
びっくりしたなぁ、あの光にさわったと思ったらいきなりこんな所に来ちゃったんだから。
やけに自然がいっぱいで綺麗なところだけど…なんだか僕、場違いな気がしてきた。
そこへ、扉が開いて、誰かが入ってきた。
いっぱいの女の人にかしずかれて歩いてくるのは、ショートヘアの女の人。
かっこいい女の人だなぁ、と思った。
ボーイッシュっていうんだよね。
すると、その人が僕のそばへ来て笑った。
「ようこそ、聖地へ。風祭将くん」
え?
せ、聖地って……?
「私はここを治めてる女王よ。西園寺玲っていうの。よろしくね」
「は、はぁ…」
僕は唖然としてしまう。
聖地に、女王様?
いったいここはどこだっていうんだろう。
西園寺さんはにっこりと笑って、
「あぁ、でも君を呼んだのは私ではないのよ」
「じゃあ誰が?」
「さっき会ったでしょう。丸い光に……あれに導かれてここに遣わされたの」
丸い光?
もしかしてさっき僕の目の前に降りてきたあれのことなのかな。
あれが僕を呼んだっていうんだろうか。
「あの…あの光ってなんなんですか?」
「あれはね、“宇宙の意思”よ。つまり“宇宙の意思”があなたを選んだってコト」
「ええっと…まだよくわからないんですけど……」
「それじゃあ、順を追って話すわね」
「お願いします」
「まず、この世界には星がたくさんあるわね? 生命のいる星、いない星、それこそ無数に。これが集まって宇宙というわけだけれども…そのうちのひとつにあなたは住んでいるわけよね」
「そうですね」
「ところが、実際の世界はそれだけじゃないの。その“宇宙”はたくさんあるのよ」
「……たくさん?」
「そう。概念としてはちょっと難しいかしら。…じゃあ、この“宇宙”全体がひとつの銀河だと思ってちょうだい。この星の集まりの銀河が無数にあって、世界を構成しているわけね」
「それはわかります」
「その概念を、そっくりそのまま“宇宙”に置き換えてごらんなさい」
「……それがこの世界の本当の姿なんですか」
「そういうこと。ただし、実際の銀河と違って、“宇宙”間を移動するのは普通の人では無理。私たちだって何かが起きたときでしか移動は出来ないわ」
「離れているんですか?」
「物理的な距離じゃないわ。だからやりとりも滅多にないのね。…それで、それぞれの宇宙は私のように女王が治めているのよ」
はぁ、と僕はもう一度曖昧な返事をする。
いきなりそんなことを言われても……。
西園寺さんは、僕が困った顔をしているのに気が付いたように笑った。
「難しいことは考えなくていいのよ。そういうものだと思っておいてくれれば」
そういうもの…なのか。
「それでね、この前この世界に、新しい宇宙が生まれたの」
「新しい宇宙…?」
「そう。赤ちゃんの宇宙ね。ただ違うのは、母親がいないことかしら」
僕は首を傾げる。
「……ええと。それで、僕はどうすればいいんですか?」
「つまりね」
「風祭くんはね、新しい宇宙の、女王候補に選ばれたの」
「………え?」
今…なんて?
「え…ええええぇぇぇぇええっっっっ!!!!!?????」
女、女王って…!?
僕っ!?
「あぁ、そんなに心配しないで。仕事自体は難しいことなんてなんにもないわ」
で、でも…っ。
「けどやっぱりあまりこの世界のことを知らないっていうのも困るのよ。だからあなたには、しばらくこの聖地にとどまって、少しこの世界のことを勉強してもらうわ」
「あっ…あの…っ」
「そうそう。あなたはまだ“候補”なの。その素質を試すというわけじゃないけど、この光の珠を『育てて』もらうわね。大丈夫、あなたの力を引き出す『力』を貸してくれる協力者たちがいるから心配しないで」
「えっと…」
「それで“宇宙の意思”が風祭くんを認めたら、晴れて新宇宙の女王となれるの」
「だっ…だから…」
「あなたの部屋は用意させてもらったから。ゆっくりしていくといいわ」
「あの……西園寺さんっ…!」
どんなわけなんだか、結局よくわからなかったけど…。
つまり、僕が新しい宇宙の女王(…?)の候補に選ばれた…ってことらしい…。
や、やってみるしかないのかな……?
ええと……。
とにかくここは、頑張るしか、ないみたい…。
そうして、僕のおかしな日々が始まったのでした……。