*CAUTION!*

もう一度だけ確認しときましょう……。
このサイトってば、「女性向け」ですよね。
ってことはほぼそうだと思って間違いないですよね…。
そうして、わたしがシナ坊であり、シナルクであることを……。
つまりそういう話なんですよ。
いやぁ……。
それを表で、ってのはどうか、っていうのは承知の上でございます。
でもそれほどでもないし。
……でも書いてるとき遠い目をしてしまったわたしであります。
シナ坊でシナルクでトライアングル好きで甘い話に耐えられる方向けのお話デス★
↓ベン図で書くとこんな感じ。

わざわざこんなもん書かんでも(笑)

塗りつぶし部分に当たる方向けです。
むしろわたしオンリー(笑)?
表の18禁(それほどじゃ全然ないですけど)。
ここまで読んで引かなかった方のみどーぞvvv



























〜星に願いを〜

< 前編 >

February 5th, 2003

★ ★ ★







− 1 −

「これで終わり?」
 シーナが紙袋を掲げてメモを手にしたレイに聞く。
 レイはそのメモとにらめっこしながら指折り買ったものを確認する。
「ええと…たぶん、これでオッケーかな」
 それでもやはり少し不安が残るのか、もう一度リストを目で追う。
 小さな袋を抱えたルックも溜め息をつく。
「なんでこんなに溜め込むんだろうね。もうちょっと分けて買うとか、考えればいいのに」
「って、僕に言われても」
「レイに言ってるんじゃないよ。こんな大量のリスト渡すあの熊にだよ」
 熊…誰のことだかは、言わずともがなだ。
 ようやく街に着いたと思ったら、買い物リストとやらを取り出し、自分で行けばいいものを「買い出しメンツはジャンケンで!」などと言い出したのだ。
 一応は旅に必要なものではあるが、なぜこんなに、と思う。
 しかもそれが「全員の旅に」なら納得しよう。
 明らかに私用と思われるものがリストの中にちらほら。
 これって解放軍もリーダーも関係なしのただの使いっ走り?
 …などと思っているうちにジャンケン大会は実施され、3本勝負で負けたのがこのレイ、ルック、シーナだったわけだ。
 もちろんルックなどはあからさまにいやそうにしたのだが、ビクトールの勢いのいい「じゃーんけーんっ」というかけ声につられて参加してしまった(強制)。
 これで負けたのがルックと他の面子だったらばなんだかんだ文句をつけたところだろうが、幸か不幸か負けたのはルックの他にはレイとシーナ。
 このふたりが行くならば仕方ない、とルックが溜め息をついた瞬間シーナの顔がぱっと輝いたことに気付いたのはおそらくビクトールだけだっただろう。
 なんにせよ、リーダー様と超一流星見占い師の一番弟子、さらに軍の中心者のひとり息子、という豪華な使いっ走りメンバーが決定したわけだ。
 もっとも、ひとり息子殿はやたらと嬉しそうではあるが。
「まあ、いいじゃん。たしかに荷物は重いけどさ…。こうやって3人でのんきにお買物、だなんて滅多にあることじゃないんだから」
 抱え込んだ荷物で前を見にくそうにしながらシーナが言う。
 対して軽装のふたりは小さく息をついた。
「……んー…言われてみれば、そうなのかもしれないけどさ……」
「…レイ、納得しちゃダメだよ。僕たちが使われてるって事実に変わりないんだから」
「うーん…そうなんだけどね。なんかシーナが言うと妙に納得しちゃうっていうか……」
「オレってもしかして弁が立つのかな!?」
「まさか。どっちかっていうと弁を弄してるって感じ」
「ルック……ごめん、なにそれ。ろうする?」
「帰って辞書ひいてみれば」
 ぶつぶつと文句を言いながらものんびりとした会話をしながら、3人はビクトールが押さえたという宿に向かって歩いていく。
「……ったく。どうせあの熊の財布なんだろ? レイ、自分のもの買っちゃえば?」
「えええ? …あー、お駄賃、ってやつか」
 ふと思いついたようにルックがとんでもないことを言い出した。
 その言葉に驚きながらもレイの返事は否定していない。
 ルックが言い出してレイが乗ってしまっては、止める者など当然いない。
「じゃあ、思い切りいっちゃう?」
 聞いていたシーナがわくわくしたような声をあげて、ただのコドモに戻ってしまった3人は顔を見合わせてうなずきあった。
 シーナは重い荷物をものともせず、片手でそっと目の前の店を指し示す。
 …当然、シーナだけが重い荷物を持っているのはレイとルックの差し金ではなく、シーナが「自分が持つ」と頑強に言い張ったからであった。
 それに対してルックは平然としていて、レイは申し訳なさそうにしていたが、本人が嬉しそうなのでよしとしよう。





 単なる「宿」にしては広いその宿は、ビクトールの名で問い合わせるとすぐに部屋の場所を教えてくれた。
 のみならず、部屋まで案内してくれるという。
 落ち着いた雰囲気の内装で、所々に飾ってある絵はさりげないが見る者が見ればそれなりに価値のある作品だとわかる。
「なんか……逆に落ち着かないなぁ……」
 案内の女性には聞こえないくらいの音量でレイが呟く。
「そう?」
 なんでもなさそうに聞き返したのはシーナ。
 さすがは大富豪の息子、といったところか。
 レイはそんなシーナを軽く睨んだ。
「簡単に言うけどさぁ。ここ、かなりランク高いんじゃないの? なんか身分にそぐわない気がするんだよ」
 言うレイも大将軍の嫡男出身だから、ある程度慣れてはいるのだ。
 父親が留守にするせいで家にいることは多かったが、貴族の晩餐会に招かれることもあったし。
 レイが言っているのは「今の立場」からであるということに気付いた上で、シーナは笑う。
「だからお客様名が『解放軍御一行様』なんじゃなくてビクトールの名前なんじゃないの?」
 あ、とレイが目を見開く。
 そういえば、普段遠征や視察に出るときにはリーダーであるレイの名義だったような…。
「違う、とか言われたって、それ振りかざしちゃえばいいじゃん。オレたち3人をパシリに使った報いだろ?」
 ぱちん、シーナが片目をつぶる。
 本当に変なところで口がうまい奴である。
 とはいえ論理的な性格かといえばそうでもなかったりするし。
 呆れたように溜め息をついたのはそのやりとりをただ聞いていたルックだ。
「どっちにしたって、落ち着かないのはたしかだよ……」
 レイとシーナは乾いた笑いを浮かべた。


 部屋数の少ない並びの一室に案内された3人は、目の前のドアを叩く。
 するとすぐに返答があった。
「お疲れさん」
 言って、ドアを開けたのはビクトールだ。
 あまりに悪びれなくて思わず「ただいま」と返しそうになる。
「って、さぁ。何でこんなどうでもいいようなもの僕たちが買いに行かなきゃなんないんだよ」
「勝負に負けたのはそっちだろ?」
「だからって〜〜〜〜っ」
 レイは悔しそうに持っていた荷物を置く。
 そう言われてしまうと言い返す言葉はないのだ。
 なにせじゃんけんとはいえ、負けは負けなのだし。
 だから完全に分がない口ゲンカではあるものの、かといって何も言わないのも癪に障るし。
 部屋の中にいたフリックは「触らぬ神にたたりなし」とでも言わんばかりに目をそらした。
 と、シーナがそのフリックの様子に気付く。
 フリックは肩にバスタオルらしきものをかけていた。
「あれ? どうしたの? 髪濡れてんじゃん」
 聞かれたフリックはほっとしたようにベッドに座った。
「あぁ…今さっき、風呂から帰ってきたところなんだよ」
「まだ夕方前なのに?」
「せっかくここまで来たのに、もったいないだろ。ビクトールがこの宿を選んだのもな……」
 いつもより饒舌なフリックがシーナにあれやこれやと説明しだす。
 その内容はどうやらビクトールからの受け売りらしいが、とりあえずレイとルックvsビクトールの口ゲンカによる火の粉から身を守るために話し相手をシーナに限定したらしい。
 隣に座ったシーナに身振り手振りを加えながら焦ったように喋るフリックの後ろ側で、やはりバトルは始まってしまっていた。


 基本的には、レイの攻撃、ビクトールの受け流し、ルックの畳み掛け、ビクトールの受け流しパート2、そして再びレイの攻撃……のローテーションで積み重なる攻撃ターン。
 レイとルックのコンビネーションは素晴らしく、時折ビクトールの言い分が揺らぐこともあった。
 がしかし、最終的にはビクトールが勝負の正当性を主張して勝利………と行くはずであったが。
 ビクトールがレイから自分の財布を受け取った時点で、形勢が傾いた。
「お、サンキュー。…………ん? なぁ、ひとつ聞いてもいいか、レイ」
「なに?」
「…なーんか……中身が想像以上に少ない気がするんだが…気のせいか」
「そう?」
 しれっと首を傾げるレイに、ビクトールは自分の書いたリストと財布の中身をじっと見比べる。
 レイとルックの顔をちらりと見やるが、ふたりとも涼しい顔だ。
「…………聞き方変えるぞ。何に使った?」
「なににって、お駄賃」
 さらりとレイ。
 ビクトールは頭を抱え込む。
「って、あのなぁ〜〜〜〜っ。なに買ってきたんだっ!!!」
「買ったんじゃないよ。おやつしてきただけだもんね」
 ねっ、とレイがルックの顔を覗き込む。
 ルックもルックで素直にこくんと頷く。
「子供を買物に出させるんだから、そのくらいあっても当然だろ」
「おまえまでかっ。子供子供っていくつだおまえらっ」
「子供だよっ。僕、だってまだ17になったばっかりだからね」
「僕なんかようやくもうすぐ14だよ。子供だろ?」
「…まったく、都合のいいときだけ子供ぶるんだからなぁ……」
「そりゃあね。この年代は大人と子供の境界線だから。子供の面と大人の面を併せ持つ危うい存在ってやつ?」
「文学的にまとめんなって…。で、おやつってなに食ってきたんだよ」
 呆れたようなビクトールに、とどめとばかりにコドモの笑顔でレイが答える。
「デラックスパフェ♪」
 あぁそうですか、と呟いたビクトールは心の中で白旗を上げた。
 そこにルックが追い討ちをかける。
「僕は……いちごパフェ」
 思い出したように言うその仕草にビクトールと、遠くから眺めていたフリックがぎょっとする。
 一瞬垣間見せたその表情はまるきりただのコドモのようで。
「で、オレがオレンジサンセットってドリンク飲んできました〜。あ、大丈夫、ノンアルコールカクテルだから」
 楽しそうにシーナが口を挟んだ。
 さっきのさっきまで戦闘を重ねながらこの町に来たはず…。
 3人は傍目から見ても気持ちいいくらいのコンビネーションでその戦闘を潜り抜けていたが……。
 まさかこんなことでもタッグを組んでいようとは。
 そしてその方が息があっているような気がするのは……果たして気のせいだろうか。
「すごかったよな、レイの。果物いっぱい乗ってたもんな」
「豪勢だったよね。さすがデラックス。僕、チョコレートがかかったバナナって好きなんだ」
「シーナのもおいしかったよ。僕はあんまり甘すぎるのって苦手なんだけど。酸味がよかった」
「あの店さ、しっかり果物の味自体を引き立ててたな。さすが、いい値段取るだけあるぜ〜」
「とか言って、シーナ、僕のバナナ半分くらい食べてたよね」
「オレのに乗っかってたオレンジあげたじゃんか〜。それで帳消し!」
「だから僕はさぁ」
 ええと。
 ビクトールとフリックは顔を見合わせた。
「……おまえら………それって……」
 思わず口に出しかけたフリックを、ビクトールは苦笑いで制した。



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