みにまむ’
=真夏の夜の夢=
− 3 −

 ふぅっと。
 引き戻されるように目が覚めた。
 昨日とはうってかわったさわやかな風が窓から吹き込んでくる。
 レイはまどろみの心地よさに、もう一度布団を引っ張り上げた。
 廊下で、誰かの話し声がする。
 ひそひそと、密やかな声だ。
 が、レイにはそれがグレミオとクレオの声だとわかる。
 部屋が静かなせいか、単語がぽつりと聞こえてくる。
「…会議……変更……」
 会議?
 なんの?
 だって僕は今日も……。
 思って、突然目が覚めた。
「………え? え? 僕……そ、そうだよね、僕って解放軍のリーダーなんだっけ……」
 慌てて手のひらに目を落とすと、それは見慣れた大きさの手。
 子供の手じゃない。
 もしかしてまたちっちゃくなっちゃったんじゃ、と思ったが、どうやらそういうわけではないようだ。
 あれは単なる夢だったらしい。
 ほっと胸を撫で下ろし、レイは廊下にいるグレミオに声をかけた。


「なんだか、懐かしいですねぇ……」
 レイの腕に服の袖を通してやりながら、グレミオがしみじみと呟く。
「こんなふうにぼっちゃんのお世話をしたものでしたよ。本当に、大きくなられましたね」
「あはは…うん」
 思わずグレミオに身支度を任せてしまったレイは、苦く笑う。
 さっきまで見ていた夢を思い出して、そういえばいつも手伝ってもらってたな、とつい懐かしくなってしまったのだ。
 が、そんな夢みたいな夢を見ていただなんて、恥ずかしくて言えない。
 なんだか幼い子供が板に付いていそうな自分に気がついてしまったせいだ。
「はい、できましたよ。今日はいい天気ですねぇ」
 ぎくり。
 グレミオのセリフに、レイが一瞬目を見張った。
 あの夢でグレミオが言っていたセリフに、似ていたから。
 けれどあれは夢だ、と思い直してレイは息を吐いた。
 そう、夢だ。
 夢なんだ。
 ……こんなふうに自分に言い聞かせているなんて、トラブル癖がついてしまっているのかもしれない。
 だがさすがに今回はトラブルじゃない。
 ………はず。


 ばたばたばた、と足音が聞こえてきたのはその時。
「おや? 誰でしょうねぇ」
 とはグレミオ。
 レイは再びぎくりとして廊下に続くドアを見やる。
 ばたばたばた、ばたーん。
「れっ、レイっ!」
「ああ、シーナくん。…それに、ルックくんですか? おはようございます」
「え? あ、ああ、おはようございます」
 グレミオにつられたのか、思わずシーナが深々と頭を下げる。
 珍しい光景だが、どこかで見たことがあるような…とレイはいやな予感。
「それでは、私はちょっと手桶を持って参りますので。あぁ、どうぞ、おふたりとも」
 笑ってグレミオが出て行く。
 残されたのは、立ちすくむ3人。
 なぜか張りつめた空気の中、シーナがはあ、と息を吐いた。
「……よかった…無事だったんだ、レイ」
「無事って…?」
 言いたいことがわかるような気もしたが、とりあえず聞き返す。
 すると今度はルックが深く息をつく。
「うん…僕たち、今朝、同じ夢を見たみたいでさ……」
「同じ夢?」
「そう。ある意味悪夢かもしれないね」
 レイは、ちら、と上目遣いでふたりを見た。
「………僕たちが3人とも子供で…近所に住んでるって………あれ……?」
「「!!」」
 なるほど、それで誰かがちっちゃくなっているのではないか、と大慌てで確認に走ったというわけか。
 どうやら見る限り全員無事なようだが。
 そこで、溜め息がハモった。
「「「……夢でよかった………」」」


「ああ、でもさぁ、結構楽しくなかった?」
 言ったのは、やはりシーナ。
「……テンションが高くて疲れた……」
 ルックが呟く。
「うーん……たしかに、楽しかったけど……ね」
 レイが腕を組んで。
「…夢じゃなくて、現実で3人とも小さくなったら……」
「……レイ…考えるなよ…頭痛くなるから……」
「あはははは、だれもフォロー入れらんねぇな……」
 乾いた笑い。
 これが、これだけですめば…と誰もが思うが、これですむのか? とも思ってしまう。
 はてさて、一体なんだってこんなことが起こるのやら。
 トラブルは、なぜか3人を避けてはくれないようである。





Continued...?




<After Words>
みにまむ’(ダッシュ)。ある意味高原復帰作?
なんだか忙しい合間に少しずつ書いていました。
みにまむ…なんだけどちょっと違うパターンですね。3人が小さくなっちゃうパターン。
結局夢オチなんですが、「本当に夢オチなんだろうな…?」と多分3人とも思ってます(笑)。
すっかり平穏を疑ってかかるようになっちゃいましたね。
だいたい10年くらい前、を目安にしてみたんですが、そうするとうち、レイの2つ下がシーナで、
ルックはさらにその2歳下なので、若干年齢に開きが出ちゃうんですよね。
小さい子供の2歳って大きいじゃないですか。
なので、シーナをベースにレイを同い年、ルックが1つ年下、って感じにしてみました。
…他の出演者の皆様の年齢もすごいことになってます。テオ様が32歳、グレミオが17歳(!)、
クレオが18歳、パーンが19歳、レパントさんが32歳、アイリーンさんに至っては22歳(若!!)
出てきてませんが、ソニアさん17歳だよ! パパ、ヤバイって(爆笑)!!!!



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